中学受験をする6年生の保護者の方から、このような相談を受けることがあります。
6年生になると、算数や国語だけでなく、理科や社会についても「このままで大丈夫なのだろうか」と不安になりやすい時期です。
特に理科は、覚えることが多いうえに、計算問題や実験・グラフを使った問題も出てきます。
そのため、「理科が苦手」と感じてしまうお子さんも少なくありません。
ただ、6年生だからといって、もう理科を伸ばせないわけではありません。
大切なのは、理科を最初から全部やり直すことではなく、「何が原因で点数を落としているのか」を見つけ、優先順位をつけて勉強することです。
私はこれまで28年間、中学受験の指導に携わってきました。
その経験から感じるのは、理科が苦手なお子さんほど、「理科を全部勉強しなければ」と考えるより、「今の自分なら、どこで点数を増やせるか」を考えたほうが、勉強がうまく進みやすいということです。
この記事では、6年生で理科が苦手なお子さんが、今から成績を伸ばすために何を優先すればよいのか、保護者の方に向けて詳しく説明します。
6年生で理科が苦手でも、今から伸ばせる
まず、保護者の方に知っておいていただきたいのは、6年生になってからでも理科の成績は伸ばせるということです。
「もう6年生だから、理科を伸ばすのは無理なのでは」と考える必要はありません。
もちろん、受験までの時間を考えると、5年生のころと同じように、すべての単元を時間をかけて勉強することは難しくなります。
だからこそ、6年生では「勉強量」だけでなく、「何を勉強するか」が重要になります。
たとえば、模試で理科が40点だったとします。
この40点をいきなり70点、80点にしようとすると、かなり大変に感じるでしょう。
しかし、その40点の中に、
- 本当は知っていたのに間違えた問題
- 基本的な知識があれば解けた問題
- 計算方法は分かっていたのにミスした問題
が含まれているのであれば、まずそこを取り戻すことができます。
「理科が苦手」という言葉だけを見るのではなく、どこで失点しているのかを具体的に確認することが、最初の一歩です。
まず「理科が苦手」の原因を確認する

一口に「理科が苦手」と言っても、その原因はお子さんによって違います。
まずは、次のように分けて考えてみてください。
物理、化学、生物、地学のどれが苦手なのか
これはお子さん自身で十分に自覚があるかと思います。
生徒によってまちまちではありますが、やはり多いのは「物理、化学が苦手」な生徒です。
でも物理も化学もいくつかの単元に分かれていますので、特に苦手意識のない単元もあるかもしれません。
いずれにしてもどこでつまずいているのか、どこが苦手なのかの現状把握は大切です。
知識や用語を覚えられていない
理科では、植物、動物、人体、天体、地層など、覚えておきたい基本的な知識があります。
ここが十分に身についていないと、問題文を読んでも何を聞かれているのか分からなくなってしまいます。
ただし、単純に用語を丸暗記するだけではなく、「その言葉が何を意味しているのか」まで理解することが大切です。
たとえば、ある用語を見て「これは知っている」と答えられても、その用語について説明を求められたときに答えられなければ、入試問題では点数につながらないことがあります。
まずは、塾のテキストなどを使って、基本的な知識が身についているか確認してみましょう。
計算問題が苦手
理科には、計算を必要とする問題もあります。
てこ、滑車、電気、水溶液など、単元によっては計算問題を避けて通ることができません。
この場合も、いきなり難しい問題に挑戦する必要はありません。
まずは、基本的な問題を使って、
「何を求めているのか」
「どの数字を使うのか」
「どのように考えればよいのか」
を一つずつ確認していきます。
計算問題が苦手なお子さんの場合、単純に計算力が不足しているのではなく、「問題文から必要な情報を取り出すこと」が苦手なケースもあります。
実験・グラフ・表などの問題が苦手
理科の入試問題では、実験の結果やグラフ、表、図などを見て考える問題もあります。
知識そのものは覚えているのに、こうした問題になると点数が取れないお子さんもいます。
この場合は、単なる暗記ではなく、
「この実験では何を調べているのか」
「条件を変えると何が変化するのか」
「グラフから何が読み取れるのか」
といったことを考える練習が必要です。
「実験1、実験2…と前置きがとても長い。それを読むのが面倒くさい。」という生徒は意外に多いです。
→ 前置きが長いということは、そこにヒントやキーワードがたくさんあるということ。
それを伝えています。
複数の単元が混ざると分からなくなる
入試問題では、一つの単元だけを扱う問題ばかりではありません。
複数の知識を組み合わせて考える問題もあります。
そのため、単元ごとの勉強では解けていたのに、模試や過去問になると急に解けなくなることがあります。
この場合も、「理科が苦手」と大きく考えるのではなく、まずは各単元の基本が身についているかを確認しましょう。
6年生の理科は「全部やり直す」必要はない
6年生になると、保護者の方が焦ってしまう気持ちはよく分かります。
理科が苦手だと、
「植物から全部やり直したほうがいいのでは?」
「5年生の内容まで戻ったほうがいいのでは?」
と考えてしまうことがあります。
しかし、受験までの時間を考えると、すべてを最初からやり直すことが、必ずしも効率のよい勉強とは限りません。
すでにできているところまで最初から復習してしまうと、本当に苦手な部分に使える時間が少なくなってしまいます。
そこで確認したいのが、模試や塾のテストなどで、
「本当なら取れたはずの問題を、どれくらい落としているか」
ということです。
たとえば、理科で50点だったとしても、間違えた問題を調べてみたら、基本問題を中心にあと10点取れる余地があったとします。
その10点を取り戻すことのほうが、今から難問をたくさん解くよりも、合格に近づくためには重要な場合があります。
6年生では、「できない問題を全部できるようにする」より、「取れる問題を確実に取る」ことを意識することが大切です。
理科が苦手な6年生が優先したい勉強

では、実際に何から勉強すればよいのでしょうか。
私は、次のような順番で考えることをおすすめします。
基本的な知識を確認する
まずは、基本的な知識が抜けていないか確認します。
特に、塾のテストや模試で何度も間違えている知識があれば、そこを優先します。
すべてを一から暗記し直すのではなく、「自分が間違えたところ」を中心に復習することがポイントです。
塾のテキストの基本問題を解き直す
現在通っている塾があるのであれば、まずは塾のテキストを活用しましょう。
新しい問題集を買って、最初から大量に解き始める必要はありません。
これまで勉強してきたテキストの中に、復習すべき問題がたくさんあります。
特に、基本問題で間違えているところは、優先して解き直しましょう。
→【中学受験】塾のテキストと市販の問題集、どっちをやる?家庭学習で迷ったときの選び方!
間違えた問題を原因別に分ける
「間違えた」という結果だけを見るのではなく、なぜ間違えたのかを確認します。
たとえば、
- 知識を知らなかった
- 知識は知っていたが思い出せなかった
- 問題文の読み取りを間違えた
- 計算方法が分からなかった
- 計算ミスをした
- 時間が足りなかった
などです。
原因が違えば、必要な勉強も変わります。
計算問題は解き方を説明できるようにする
理科の計算問題では、答えだけを覚えてしまうと、少し問題の形が変わっただけで解けなくなることがあります。
「なぜこの式になるのか」を、自分の言葉で説明できるようにすることが大切です。
最初は時間がかかっても構いません。
基本的な問題を使って、解き方そのものを身につけていきましょう。
過去問で出題傾向を確認する
6年生の秋以降であれば、志望校の過去問にも取り組んでいくことになります。
過去問を解いたら、点数だけを見て終わりにするのではなく、
「どの単元で失点したのか」
「基本問題を落としていないか」
「知識不足なのか、考え方の問題なのか」
を確認しましょう。
志望校によって、理科の問題の出し方や難易度には違いがあります。
だからこそ、受験する学校の問題を知ったうえで、勉強する内容を考えることが大切です。
→【中学受験】過去問はいつから始める?6年生の秋に始める正しいタイミングと進め方
親がやってはいけない理科の勉強のさせ方

理科の成績が思うように伸びないとき、保護者の方も焦ってしまいます。
しかし、その焦りから勉強方法を間違えてしまうことがあります。
「理科は暗記だから全部覚えなさい」と言う
理科には暗記が必要な部分もあります。
しかし、理科は暗記だけの科目ではありません。
実験やグラフ、計算など、知識を使って考える問題もあります。
「全部覚えれば大丈夫」と考えるのではなく、知識を使って問題を解くところまで意識しましょう。
難しい問題ばかり解かせる
「理科が苦手だから、難しい問題をたくさん解かせなければ」と考える必要はありません。
基本問題で失点している状態なら、まずはそこを直すほうが先です。
難問を解くことよりも、今取れるはずの点数を落とさないことを優先しましょう。
苦手単元を一度に全部克服させようとする
理科には多くの単元があります。
そのすべてを一度に克服しようとすると、お子さんも疲れてしまいます。
「今日はこの単元のこの部分だけ」というように、取り組む範囲を小さくしてあげることも大切です。
問題集を次々に買い足す
成績が上がらないと、「もっと分かりやすい問題集があるのでは」と考えてしまいます。
しかし、教材を増やしたからといって、必ず成績が上がるわけではありません。
今使っている教材を十分に活用できているかを、まず確認してください。
間違いの原因を確認せず、同じ問題を繰り返させる
同じ問題を何度も解いて正解できるようになっても、「答えを覚えているだけ」ということがあります。
大切なのは、
「なぜ最初に間違えたのか」
「次に同じタイプの問題が出たら、どう考えるのか」
を確認することです。
6年生の理科は「何点取れるか」を考える
6年生の理科で大切なのは、必ずしも「理科を得意科目にする」ことではありません。
もちろん、理科が得意になれば大きな武器になります。
しかし、受験までの時間を考えたとき、すべての科目を完璧にすることは簡単ではありません。
そこで、
「今の点数から、あと何点取れるか」
と考えてみてください。
たとえば、今40点なら、まず45点を目指す。
45点が安定してきたら、次に50点を目指す。
このように考えると、やるべきことが具体的になります。
「理科を何とかしなければ」と考えるより、
「このテストで落とした基本問題を取れるようにしよう」
と考えたほうが、お子さんも取り組みやすくなります。
そして、志望校の合格に必要な点数を考えながら、どこまで理科を伸ばす必要があるのかを判断していきます。
28年間の中学受験指導で感じる、理科が苦手な子の伸ばし方
28年間、中学受験の指導をしてきて感じるのは、最初から「理科が苦手な子」と決めつける必要はないということです。
「理科が苦手」と言っていたお子さんでも、実際に間違い方を調べてみると、すべての単元が苦手なわけではないことがあります。
たとえば、知識問題ではある程度取れているのに、計算問題になると点数を落としている。
あるいは、知識は覚えているのに、実験問題になると解けなくなる。
このように原因が分かれば、やるべきことも変わってきます。
私は、理科の成績が伸び悩んでいるお子さんほど、まず「できないところ」だけを見るのではなく、「できているところ」と「あと少しでできそうなところ」を見つけることが大切だと考えています。
全部を完璧にしようとするのではなく、今の状態から少しずつ取れる点数を増やしていく。
この積み重ねが、6年生の後半では大きな差になることがあります。
保護者の方には、お子さんの点数だけを見て「理科が苦手」と判断するのではなく、
「この問題は本当なら取れたのではないか?」
「どこを直せば、あと5点取れるだろう?」
という視点でテストを見ていただきたいと思います。
まとめ|6年生の理科は「苦手」ではなく「どこを伸ばすか」を考えよう
6年生になって理科が苦手だと、「もう間に合わないのでは」と不安になるかもしれません。
しかし、6年生からでも理科の点数を伸ばすことはできます。
大切なのは、理科を最初から全部やり直すことではありません。
まずは、
- 知識が不足しているのか
- 計算問題が苦手なのか
- 実験やグラフの問題が苦手なのか
- 複数の単元が混ざると解けないのか
を確認してみてください。
そのうえで、塾のテキストなどを使って基本問題を復習し、模試やテストで間違えた問題を一つずつ見直していきます。
そして、何より大切なのは、
「理科を得意科目にしなければ」と考えすぎないことです。
今の点数から、
「あと5点取るにはどうすればいいか」
「あと10点取るには、どこを直せばいいか」
と考えてみてください。
6年生の受験勉強では、苦手科目を一気に得意科目に変えることよりも、今まで落としていた点を一つずつ拾っていくことが大きな力になります。
→【中学受験】6年生で算数が苦手…今から成績を伸ばすために親がやるべきこと!
お子さんの「理科が苦手」という言葉を、そのまま受け取るのではなく、
「では、どこを伸ばせば点数が増えるのか」
と考えてあげてください。
それが、6年生から理科を立て直すための第一歩です。

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